映画感覚思考

映画を観て感じたこと、考えたことを書いていきます。

映画感想:『ブレードランナー 2049』

 

 

 

 

   待ち受ける未来とは―。

  

 

 

 『ブレードランナー 2049』

     原題:Blade Runnner 2049

 

 

 あらすじ

  2049年、ロサンゼルス。異星植民のために生み出された人造人間、"レプリカント"が存在する世界。"レプリカント"は”人間”よりも優れた頭脳、身体能力を持ち、”人間”との区別は困難なほどの高性能。それ故に自我を持ち、”人間”に反旗を翻した過去がある。”人間”側は、造反した"レプリカント"を処分する"ブレードランナー"を組織し、旧型の"レプリカント"見つけ出し、処分を進めていたー。
 
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 ディストピアの世界観に大きな影響を及ぼした、前作『ブレードランナー』。『ブレードランナー』に対しては、その功績からリスペクトはあるものの、そこまで思い入れはありませんでした。
 その続編としての今作に対しても、お祭りには乗っかっておこう精神で鑑賞したのですが、期待値があまりなかったというのもあると思いますが、かなり刺激的なおもしろ興味深い作品でした。この時代に観れて良かった作品だと思います。
 
 
オススメ度:☆☆☆☆(おすすめ!)
 
       ↓↓↓以下ネタバレを含みます↓↓↓

 

 
 いやー、面白かったです。未来を垣間見る体験を久しぶりにした気がします。世界観描写がとても好きでした。今の時代に観れて良かったです。
 
 
 
 何と言っても、”AI”の描写が良かったですね。『her/世界でひとつの彼女』の先を行くビジョンを魅せてくれたと思います。まさに未来な描写でした。これはやばいな、と思わせられ、好奇心をくすぐられるビジョンでした。
 
 
 ここからは、いくつかの面白いなと思った未来技術の描写を取り上げたいと思います。
 
 まずは、"合成農業"、虫からタンパク質を摂るというのは、まさに現在、研究や食品開発が進められていますからね。


 
 
  また、市井の人々か自販機から食糧を手に入れるシーン。この時代の経済がどうなっているのか分かりませんが、お金を払っていないところを見ると、キャッシュレスで自動支払いがなされているのではないかと思いました。まさに、これも現在実用化され始めている技術です。

 もしかしたら、世界を牛耳るウォレス社が無料で配給している可能性もありますが。
 
 
 そして、空飛ぶ車のドローン技術。最近の作品で、とてもよく見るようになったドローンですが、まさに時代の反映だと言えるのではないでしょうか。
 
 
 
 話は変わって、ここからは、ストーリー読み解きに関して、感覚的に思ったことを書いていきます。
 
 
 本作における”造られたもの”には、”レプリカント”、”AI”の2種類がありました。
 メインの対比としては、前作に引き続き、”人間”と人間が造り出した”レプリカント”に比重が置かれていましたが、そこに新たに”人間”との対比として、”AI”が参入した形になってましたね。
 とはいえ、あくまでも本作独自要素である”レプリカント”がメインであるため、”AI”については主人公Kに寄り添う姿のみが描かれていました。
 例えば、”レプリカント”のように”人間”に造反する”AI”などが登場していれば、”人間”、”AI”、”レプリカント”の三つ巴となり、さらに深みが増したかもしれません。とはいっても、濃すぎて成り立たせるのはめちゃくちゃ難しいとは思いますが。
 そして、”人間”と”レプリカント”、”人間”と”AI”、それぞれの境界が不明瞭に思える様々な描写によって、【人間とは】という問いが造り出されていましたね。
 現実世界では、”AI”において、必ずこの問いと向き合わなければならない時が近いうちに訪れるので、その未来の形のビジョンを描いたことは意義があると思います。
 ”レプリカント”については、おそらく現実世界では、本作とは違った技術発展をしていくと思うので、”レプリカントと”対峙せずにすむのかなと思いますが。
 
 ”人間”との対比関係にある、”レプリカント”と”AI”が恋愛をするのは面白いですね。両者とも”人間”との境界が不明瞭で刺激的でした。
 刺激的といえば、”AI”とのセックスシーン。これも『her/世界でひとつの彼女』で描かれたビジョンの先を行く描写となっていましたね。
 
 繁殖する”レプリカント”、”人間”を殺す”レプリカント”、もはや私は”レプリカント”は”人間”だろうと思いましたが。
 
 
 
 
 
 この映画においては、”女性”を恋愛対象とする”男性”の目線からの女性描写が強かったかなと感じました。 
 総じて”女性”が”ポルノ”として消費されている描写が多めかなと思いました。レプリカントを従業員とした売春施設しかり、広告の中の誘惑する”女性”、といった形で表象される”女性”が多かったように感じます。
 とはいっても、誘惑する”女性”だけではなく、主人公Kの上司や軍を率いるレプリカントが”女性”であったりしました。 
 しかし、私はこの映画を観ていて、ある描写から”ガラスの天井”を読み取ってしまいました。
 それは、捕まったデッカードを巡ってKとラブが格闘する場面です。最後にラブはKによって溺死させられるのですが構図として、”男性”であるKが”女性”であるラブを水中に押し留めようとし、結果ラブは水面を超えられずに死ぬというものになっています。
 そこに、社会における見えない障壁が”女性”を阻むという”ガラスの天井”を想起したのです。
 
 また、ラブは権力の頂点である”男性”のウォレスに従う”女性”であり、そのラブが、Kの上司である”管理職の女性”を殺害する構図から、”自立した女性”を”男性に従う女性”が妨害するという事を連想させられました。やや、この連想は私の穿った見方である気もしますが。
 
 
 
 
 他に、社会的問題を描いた部分として格差の行き着いた先の描写としての、ごみ捨て場に住む人間たちというのもあると思います。
 フィリピンなど途上国において、現在においても、そのような生活を強いられている方々がいるという事実を想起しました。児童労働に関しても、フィクションではなく、子どもとしての生活ができない人々がいるという事実をフィクションの中で描いており、ハッとさせられます。
 
 そのごみ捨て場での児童労働に関して私が思うところとして、管理する側の都合から、恐らく男女で髪型を坊主と長髪にしていたと思われる描写があります。
 ダイバーシティという標語のもと、様々な多様性を尊重していこうという気運が高まっている中で、性の多様性も認知されつつある現在、雑な男女分けに対しては、不快な思い、抑圧を感じる方々がいます。
 このような多様性は、貧困のような余裕がない環境下では切り捨てられやすい傾向があるものだと思います。また、管理する側の論理からも切り捨てたいもののように思います。しかし、”人間”とは多様性の産物であり、それがなくなれば、それこそ”人間”の”人間としての核”が抜け落ちるのではないかと思います。
 児童労働の描写から、そんなことを思いました。
 
 
 もう1つ、気になったのは、”レプリカント”への目線です。これには、頭を抱えたくなる状況が描かれているなと思いました。
 ”人間もどき”として向けられる視線、暴言、態度。”レプリカント”を現代におけるマイノリティ、LGBTQや障害者、少数民族などの方々に置き換えた時にまた、浮かび上がってくるものがあるのではないでしょうか。特にアメリカにおける、公民権運動が始まる前、アフリカ系アメリカ人が置かれた境遇に照らし合わせると。
 
 これに関連して、指摘したい事は、主要キャストが白人で占められている事です。どうなんでしょう。もっとできたでしょうに。
 
 
 ここからは、雑感です。
 
 この映画のラストでは、kはデッカードの手助けによって子どもに会う事ができていましたが、結局子どもを求めるウォレス自身が健在なため、結局捕まってしまうのでは、、と思いました。それとも、レプリカント軍が何とかするのでしょうか。
 
 この作品は、続編要素が多分に含まれているため、前作を観ておく事が必須の作品なのかなと思います。構造自体もなかなか入り組んでますし。
 
 レイチェル再登場のシーンはCGの進歩を改めて実感しました。違和感はほぼなかったです。本当に亡くなった方や若い頃の風貌を再現して、もしこの人がこの時代にこの年齢で生きていたら、、というような映画が一本作れるんじゃないでしょうか。面白いですね。
 
 
  あとは、Kが、ジョイを”広告AI”として見つけた時、何を思ったのか。どうすれば良いか分からなくなっていたKに、自分だけでなく、”人間”に使われるものとしてのみんなの”AI”、の姿を見たことで、自分も”人間”に使われる”レプリカント”であるということを考え、殺すはずのデッカードを助けることにつながったのか、なんてことも思いました。
 
 
 
 この作品には、前日譚として三本の短編が作られています。その中の『ブレードランナー ブラックアウト 2022』はアニメ作品としてクオリティが高く、前作へのオマージュも見受けられる良作だと思いました。
 簡単に紹介をすると、① 『ブレードランナー ブラックアウト 2022』は、劇中で語られる大量データ消失が起きた事件を描いた物語、② 『2036:ネクサス・ドーン』は、新型レプリカント、ネクサス9型とウォレスの物語、③『2048:ノーウェア・トゥ・ラン』は、本作の直前の物語であり、最初に出てくるサッパーがなぜ、ブレードランナーに捜査されることになったのか、という物語です。
 本作の補完と余韻が味わえればと思います。どうぞ。
 
 
① 『ブレードランナー ブラックアウト 2022』


 ② 『2036:ネクサス・ドーン』

 

 ③『2048:ノーウェア・トゥ・ラン』


 
 
 
 
 
 以上、『ブレードランナー 2049』感想でした。ありがとうございました。